レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

北極圏1万2000キロ


本書は伝説的な冒険家・植村直己氏がグリーンランドからカナダを経て、アメリカ(アラスカ)までの1万2000キロを犬ぞりで走破した過程を執筆したものです。

1万2000キロといわれても実感が沸かない数字ですが、ためしに北海道の最北端・稚内から九州の最南端・佐多岬までの運転ルートを検索してみると約2800キロであり、全然足りません。
東京~ロンドン間が直線で約1万キロという距離のため、とにかく途方もない距離であることが分かります。

またグリーンランドとカナダは陸続きではなく、凍結した海上を移動する必要があります。
そのためこの犬ぞりの冒険は冬季に行う必要があり、植村氏は2シーズン(1974年、1975年)に分けてこの冒険を敢行しています。

北極圏に住むイヌイットにも前例が無い、人類史上初の試みでもありました。

ちなみに犬ぞりを日常的に使用するのはグリーンランドのイヌイットのみであり、カナダ、アメリカに住むイヌイットはスノーモービルを利用しているようです。

もちろんスノーモービルを使用した方が早くて快適ですが、北極圏の大部分は無人地帯であるため機械の故障や破損は死へと直結します。

一方で10数頭で行う犬ぞりは、犬の世話が必要なもののリスクを分散することができるため、今回のような冒険での使用は合理的であるといえます。

植村氏は冒険にあたりグリーンランドで犬ぞりを扱うための訓練も行い、万全の準備を行います。

ただし当然のように犬ぞりで運べる重量には上限があり、またときには1000キロ以上の無人地帯を走破する必要があり、途中で食料を調達するためにカリブーやアザラシといった野生動物をハントする必要がありました。

さらには当時はGPSもなく、1日中太陽が昇らない極夜をコンパスや地形によって進まなければいけない危険、薄い海氷を踏み抜いて溺れてしまう危機、油断した隙に犬に逃げられてしまう危機など、本書を読んでゆくと冒険に成功したことが奇跡のように思えます。

実際に植村氏自身がもうこれ以上進めないと弱気になる場面が幾度もあり、その度ごとに強い意志力、そして優しいイヌイットたちの援助によって再び前進してゆく姿には読者も勇気づけられます。

ちなみに本ブログでは角幡唯介氏が北極圏を冒険した書籍も紹介していますが、併せて読むことでより北極圏地域へ対する理解が深まり楽しむことができます。

  • アグルーカの行方
  • 極夜行前
  • 極夜行

    • 加えて北極圏に住むイヌイットの生活に魅了され、1972年にグリーンランドを訪れてそのまま現地のイヌイット女性と結婚して猟師として生活を続ける大島郁雄氏の著書「エスキモーになった日本人」もお勧めです。