炎立つ 伍 光彩楽土
150年にも及ぶ陸奥の興亡を描いた「炎立つ」の最終巻です。
清原氏を滅ぼし、奥州藤原氏の時代を築いた"藤原清衡(ふじわらのきよひら)"の孫にあたる"秀衡(ひでひら)"の時代から物語が始まります。
15万に及ぶ騎馬軍団を抱え、本拠地である平泉は平安京を凌ぐ繁栄を誇っており、秀衡の時代に奥州藤原氏は全盛期を迎えました。
一方中央では、今年の大河ドラマの主人公である"平清盛"が天皇を凌ぐ権力を手中にし、武士の時代が到来しています。
事実上、日本に2つの国が存在しているといってもよい状態であり、日本史において陸奥がもっとも輝いていた時代です。
「おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢の如し」。
やがて清盛、秀衡も老いには勝てず、再び日本は戦乱の世に突入してゆきます。
源氏にとって陸奥は運命の糸で結ばれているとしか思えず、この時も平氏によって追いやられた"源義経"が藤原氏によって匿われていました。
一方で北条氏の支援を受け、伊豆では義経の兄である源頼朝が平氏へ対して旗揚げを行い坂東武者たちの力を結集してゆきます。
この2人は安倍氏を滅ぼし、そして藤原氏として再興に縁の深かった源義家の直系にあたりましたが、当時の奥州藤原氏は平氏と良好な関係にあり、源氏の時代の到来に懐疑的だったため、表立った源氏への援助を行うことはありませんでした。
更に匿った義経自身が、その名声を恐れた頼朝によって排除される段階にあたって、奥州藤原氏の最後の当主であった"藤原泰衡(ふじわらのやすひら)"は大きな決断を下すことになります。
時代の趨勢を見極めることの出来なかった泰衡の歴史的な評価は一般的に低いですが、本作品では違った視点から、その姿が描かれています。
はたして泰衡が陸奥の歴史にどのような幕を下ろすのか?
著者の陸奥への愛を感じさせる結末が待っています。