本音の沖縄問題
前回に引き続き、仲村清司氏の著書のレビューです。
エッセー風の作品と雰囲気が一変し、今回は沖縄の抱える問題に迫ったかなり真面目な内容になっています。
著者は大阪で生まれ育った"沖縄2世"という経歴を持っており、それがきっかけで沖縄へ興味を持ち、やがて移住するにまで至ります。
つまり純粋な"ウチナーンチュ(沖縄県人)"でも"ヤマトンチュ(沖縄以外の日本人を指す)"でもない、著者ならではの視点によって沖縄問題を客観的に分析する姿勢が印象に残る1冊でした。
在米軍基地の辺野古移転、技術的な不安を抱えるオスプレイ配備、さらには米海兵隊による犯罪など、日本中でこうしたニュースが毎日のように報じられています。
高い失業率と、全国で低い所得水準といった経済面でも多くの問題を抱えています。
それでも沖縄県以外に住む日本人が、"我が事"のようにこの問題を考えているとは到底思えない状況です。
例えば「日本は未だにアメリカに占領されている」と言われても、殆どの日本人は鼻で笑うでしょう。
しかし本書によれば、国土面積の0.6%にしか過ぎない沖縄県に日本全国の米軍専用施設面積の74%が集中しているのです。
県の2割近くの面積が米軍基地によって占められており、「現在も日本はアメリカに占領され続けている」と考えてしまう沖縄人が少なからずいても、少しも不思議ではないでしょう。
「沖縄は基地で食っている」という批判に対しても、実際には本州の企業が基地関連の工事を受注している状況や、基地に使用されている土地の借用料が決して膨大な数字でないこと具体的に解説しています。
ちなみに"借地"という単語も正確ではありません。
元々は米軍が民間人より強制収容した土地なのです。
尖閣島や竹島、北方領土に関する問題、北朝鮮の拉致や安全保障に関する問題。
様々な国際問題を抱えていますが、国内問題と国際問題の両方の性格を持っている沖縄の諸問題に関しては最優先で取り組むべき課題です。
なぜなら沖縄が日本へ返還されてからすでに40年が経過し、多くの同じ国民が暮らしているにも関わらず、他の地域と比べて著しく不平等な状況が現在進行形で続いているからです。
本書の最後にあるコザ市の市長を16年間務めた、大山朝常氏へのインタビューも衝撃的な内容です。
彼は沖縄の日本復帰運動のリーダーを務めた人物ですが、その本人が晩年に祖国復帰運動を心の底から後悔しているといった発言をしています。
しかし本書をあらかた読み終えたタイミングでの氏の発言は、「あり得る」と思ってしまうほど内容の濃いものでした。
著者は1人でも多くの日本人に沖縄の抱える問題を知って欲しいという思いで本書を執筆したと思われますが、私自身も本書を読み終えて同じ気持にさせられた1冊です。