レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

鉄道員(ぽっぽや)

鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)

当ブログでも何作か紹介した浅田次郎氏の短篇集の1つであり、収録作品は以下の通りです。

  • 鉄道員(ぽっぽや)
  • ラブ・レター
  • 悪魔
  • 角筈にて
  • 伽羅
  • うらぼんえ
  • ろくでなしのサンタ
  • オリヲン座からの招待状

何といっても特筆すべきは、本作に収められている「鉄道員(ぽっぽや)」が直木賞を受賞し、浅田次郎氏が名実ともに日本を代表する小説家として認められた出世作であるという点です。

高倉健が主演の映画が大ヒットしたことを覚えている人も多いと思いますが、本作の中から他に2作品が映画化されており、1つの短篇集としては異例のことです。

ただ浅田氏の短篇集はどれも甲乙つけ難いほどに素晴らしく、本書に収録されている作品が特別優れているというわけではありません。

本作をはじめ浅田氏の作品には、しばしば幽霊をはじめとした怪奇現象、超常現象といったものが登場します。

浅田氏自身はそうした迷信を信じない性質であることを明言していますが、頻度や程度の差こそあれ、人は誰でも理論や偶然という言葉だけでは説明のつかない出来事に遭遇することがあるのではないでしょうか。

作品の登場人物たちは、いずれも平凡な人びとです。

そんな彼らに突然起こる小さな奇蹟の体験が、人生の転機をもたらします。

我々はともすると、「自分は退屈で平凡な人生を送っている」と感じている人も多いのではないでしょうか。

そんな私たちにも小さな奇蹟が訪れるかもしれず、それを信じることができるかどうかが豊かな人生の分かれ道なのかもしれません。