マギの聖骨(下)
私自身はキリスト教徒ではありませんが、"聖遺物"という言葉の響きには神秘的な印象を抱きます。
本書はドイツのケルン大聖堂で聖遺物として保管されている"マギの聖骨"がテロリスト集団によって盗まれ、そして大量の殺人が行われるところからはじまります。
マギとは"東方の三博士(三賢者)"ともいわれる新約聖書に登場するキリストの誕生を祝福したといわれる伝説の人物たちです。
そしてテロリストたちが聖遺物であるマギの遺骨を強奪したのは、金のためでもなく、まして宗教的な理由からでもありませんでした。
そこには過去の人類が発見し、そして失われてしまった現代の科学でも解明することのできない脅威のテクノロジーの鍵となり得るものが隠されていたのです。。。
本書はミステリー小説でもあるため、ここで謎の正体を書くのは控えますが、登場する人物たちも魅力的です。
グレイソン・ピアース隊長率いるシグマフォースですが、同僚のモンク、そして女性隊員・キャットといったメンバーに加えて、ヴィゴーやレイチェルといったイタリアやヴァチカン市国の美術遺産の保護部隊とタッグを組んで危機を乗り切り、そして大いなる謎を1つ1つ明かしてゆく過程には目を離せません。
本書を読んで感じたのは、この作品はアメリカ人作家でなければ書けない気がします。
言い方を変えれば、"ハリウッド"という存在を抱えた国の作家でなければ書けない作品であるともいえます。
アメリカならではのエンターテイメント要素が贅沢に取り入れられており、私がすぐに思いつくだけでも、本書には下記の要素がすべて含まれています。
- TVドラマ「24」に代表される、時間と場所に制約を加えたスリリングな展開
- TVドラマ「Xファイル」を彷彿とさせる超常現象へ対する科学的考察という切り口
- 映画「ダ・ヴィンチ・コード」のように宗教の定説へ対する神秘的な異説の投げかけ
- 映画「インディ・ジョーンズ」に代表される冒険アドベンチャー
- 「007」シリーズに代表される伝統的なスパイ小説の要素
本作品がアメリカでベストセラーになったのもうなずける内容であり、近い将来にハリウッドで映画化される可能性も高いのではないでしょうか。