ユダの覚醒(上)
シグマフォースシリーズの3作目になります。
さすがに立て続けに3作品めに突入すると、ストーリーの展開がだいたい分かってきます。
- 最初に大きな謎が読者に提示される
- その謎を解き明かすため、巨大な陰謀(平たくいえば悪事)の実行が計画される
- ピアース隊長率いるシグマフォースが出動する
- 本格的なストーリー(謎解き)に突入する
だいたいこのような流れですが、良い意味でも悪い意味でも"シグマフォースシリーズの安定感"、つまり読者の期待を裏切らない謎解きが展開されてゆく一方で、どこかマンネリ化を思わせます。
ただしシリーズの作品の質は高いレベルで維持を続けており、ピアース隊長やクロウ司令官といったレギュラー陣のほかに、1作目で活躍したモンク隊員や、ヴァチカン機密公文書館のヴェローナ館長、ギルドの謎の工作員・セイチャンといったキャラクターが再登場します。
1作目からの読者にとっては嬉しいサプライズである一方で、1タイトルでストーリーが完結するスタイルであるものの、いきなり本作品からシグマフォース・シリーズを読み始めるのはお薦め出来ません。
今回は「東方見聞録」で有名なマルコ・ポーロを題材にしていますが、作品の導入部を少し引用します。
自分の旅路に関して、マルコ・ポーロが決して語ろうとしなかった話がひとつだけある。マルコ・ポーロが多くの随行員を失い帰国したのは事実であり、この逸話も現代に伝えられているもののようです。
そのことについては、本の中でも遠回しにしか触れられていない。
マルコ・ポーロが帰国する際、フビライ・ハンは一行に十四隻の巨大は船と六百人の随行者を提供した。
しかし、二年間の航海の後にヴェネツィアに帰国した時には、二隻の船と十八人の随行者しか残っていなかった。
ほかの船と人々の運命については、今日に至るまで謎のままである。
難破したのか、嵐に遭ったのか、それとも海賊に襲われたのか?
マルコ・ポーロは決して語ろうとしなかった。
死期が迫り、もう一度だけ旅行の話をしてほしいとせがまれると、マルコ・ポーロは次のような謎めいた言葉を発したと伝えられる。
「私は自分が目にしたことの半分しか話していない」
果たして語られることなかったマルコ・ポーロが経験したものとは・・?