ユニクロ 世界一をつかむ経営
全国展開前の時代からユニクロを見てきた著者が、代表の柳井正氏の人間像にスポットを当てながら、その軌跡や経営手法を紹介してゆく本です。
個人的にユニクロに行く機会は余りありませんが、もはや日本中でユニクロが出店していない町は珍しいとまでいえる状況です。
私がはじめユニクロを知ったのは15年近く前の学生の頃でしたが、そのコンセプトに新鮮味を感じたことは覚えています。
やがて店舗数が爆発的に増え、いつの間にか日本でもっとも知名度の高い衣料店チェーンになっていたという印象です。
そんなユニクロがどんな経営判断をして販売戦略・商品開発、そしてマーケティングを手掛けていったかを詳細に知ることができ、ユニクロを率いる"柳井正"という経営者の考えも本書で充分に紹介されています。
おそらく本書はビジネス書に分類されるのでしょうか、個人的には"ユニクロ"という存在を知るための参考書という感想を持ちました。
パナソニックやソニーの時価総額に迫るユニクロは、完全に成功したビジネスモデルであるといえ、本書に書かれている内容は既に過去のものです。
ユニクロを題材にしたビジネス書は数多くあり、ユニクロに関する本をはじめて読む人を除いては、特に目新しい発見はないように思えます。
そんな中で本書を読んで一番印象に残ったのは、人間・柳井正です。
数々の失敗を経験しつつも、その不屈の精神力、時代の流れを読む判断、既成概念に囚われない合理的で斬新な考え方は、稀代の起業家として歴史に名を刻むでしょう。
一方で停滞するユニクロの現状を打破すべく役員全員を解任するといった荒療治を行った過去、全従業員に企業理念を徹底させるという姿勢は、妥協を決して許さない厳しい人間像をも浮かび上がらせます。
それは超大企業となったユニクロ自身にとってさえ達成が容易ではない、中・長期目標を掲げる点からも伺い知ることができます。
目標に到達するためには柳井氏以下、全社員が団結して志を共にしなければ達成は困難でしょう。
「彼の志に賛同できる者のみがユニクロに集うことができる」
今までの単なる衣料の巨大チェーン店という印象だけでなく、これが本書を読んで新たに感じたユニクロへの印象です。
しかし強力なカリスマである柳井氏も来年で65歳になるようです。
本当のユニクロにとっての正念場は、彼が引退した後にやって来るように思えてなりません。