レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

水滸伝 19 旌旗の章

水滸伝 (19)  旌旗の章 (集英社文庫)

いよいよ北方謙三氏の「水滸伝」も最終巻です。

1ヶ月以上にわたって1つの作品を読み続けたのは本当に久しぶりです。

「水滸伝」を読んでいる途中で、続編の「楊令伝」、さらに現在も連載中の「岳飛伝」の存在を知り、著者の並々ならぬ創作意欲に驚きます。

もちろん(あまり時間を空けずに)続編も読んでみたいと思います。

このブログは作品の内容を軽く紹介しながらも、これから読む人のためになるべくストーリーを伏せるという微妙なスタンスで書いているのですが、それでも最終19巻まで書くネタが尽きることはありませんでした。

それは綿密な構成で書かれていることはもちろん、梁山泊の好漢たちのみならず、彼らの宿敵となる青蓮寺童貫軍にも魅力的なキャラクターが登場し、多彩な人間たちの生き方が交差している人間ドラマそのものだからでしょう。

つまり彼ら1つ1つの人生が縦糸や横糸になって大きな1つの物語を紡ぎ出しているようです。

登場する人物たちの生き方は自らが望んだかどうかは別として、いずれも劇的であり苛烈です。

けっして現代に生きる私たちの人生が平たんだとは言いませんが、それでも生死を賭けて敵と対峙したり、自らの命を犠牲にして家族や仲間を守らなければならない日常はまず起こりません。


もちろん可能な限りそんな場面に遭遇したくはありませんが、その一方で男たちの深層心理には、梁山泊の好漢たちのような生き方に憧れるといった二面性があるのも事実です。


まさに「北方水滸伝」はそうした憧れを骨太な長編小説として具現化したものであり、世代を超えて日本人に読み続けられてゆく可能性を感じる作品です。