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日本の地価が3分の1になる!


2010年には1億2806万人だった日本の人口は、2040年までに16.2%減少すると推計されています。

人口が減少すれば土地の値段が下がるのは当然だと思われますが、本書ではそれが"3分の1"つまり約70%も下落すると主張しています。

この人口減少率をはるかに上回る地価の下落率は、15~64歳の生産年齢人口(現役世代)が減る一方、高齢者の人口が大幅に増加する、つまり日本全体の年齢構成が原因で引き起こされるとあります。

高齢化社会が加速している日本では、現在3人の現役世代が1人の高齢者を支えている計算になりますが、なんと2040年には4人の現役世代が3人の高齢者を支えることになるのです。

現役世代の人口減少と連動してGDPが減少するのはもちろん、高額の社会保障費の負担も足を引っ張ることによって賃金上昇が難しくなり、結果として土地への需要が減り、地価が大幅に下落するという理論です。
もちろん地価の下落率も高齢者の割合が多い地域ほど大きくなります。

本書の副題に"2020年 東京オリンピック後の危機"とあり、個人的にも東京オリンピックが一時的な景気底上げになっても、超高齢化社会を解決する糸口にはなりそうもなく、むしろオリンピック後の設備維持費を考えるとマイナス要因になりかねない危機感はあります。

一方で現在私自身が土地を持っておらず、不動産投資信託にも手を出していないことから、今から25年後に起こる地価下落については差し迫った危機感を持っていないのも事実です。

しかし街中が空き家だらけになり、経済的にも停滞することで日本の未来が暗くなることについては不安を抱いています。

本書ではそれを指し示す多くの統計データが掲載されており、一定の説得力を持って読者に迫ってきます。

この未来を回避するために著者は、高齢者を減らす日本の人口を増やすという提言をしています。

まず高齢者を減らすというと物騒に聞こえますが、75歳以上を高齢者として定義し直すことで2040年時点での現役世代負担率を2013年当時と同じ水準に維持することが出来るとしています。

65歳以上を高齢者と定義したのは今から50年以上も前であり、その当時の平均寿命が65歳だったことに起因するようです。

たしかに80歳という現代の平均寿命を考えれば現実的な提言のようにも聞こえますが、75歳を定年としてそれまで働き続けることに不安や不満を感じる人は私を含めて多いはずですが、実際に定年延長に動く企業が増えていることからも、この流れは遅かれ早かれ進んでゆくものと思われます。

日本の人口を増やすという点においては、もちろん出生率を伸ばす努力や政策は必要と認めますが、急激な増加という点ではやはり現実的ではありません。

そこで著者は1980年から2013年までに2倍以上に増加した日本に住む外国人の人口をさらに伸ばし続けるという提言を行っています。

つまり移民を積極的に受け入れることで生産年齢人口の減少を食い止めるということです。

ここ数年だけ見ても明らかに外国人が増えたことは実感できますが、ブルーカラー、ホワイトカラー問わずに移民を受け入れる必要があるとう点がポイントです。

日本の高齢化社会を考える上で示唆に富んだ提言と、それを裏付ける豊富なデータが掲載されており、これからの日本を考える上で参考になる本であることは間違いありません。

ただし本書では「経済の停滞=日本の衰退」という図式が前提にあることを注意して読む必要があります。

私自身は世界に先駆けて超高齢化社会に突入する日本が、経済大国としての地位を守り続ける必要があるのかという点に疑問を持っていますが、その辺りは別の機会にでもじっくり触れてみたいと思います。