七帝柔道記
七帝柔道(ななていじゅうどう、しちていじゅうどう、Nanatei-judo、Shititei-judo)は、北海道大学、東北大学、東京大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学の旧帝大の柔道部で行われている寝技中心の高専柔道の流れを汲む柔道である。七大柔道とも呼ばれる。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%83%E5%B8%9D%E6%9F%94%E9%81%93
冒頭からWikipediaの解説を引用しましたが、よく知られているオリンピック競技の柔道は立ち技中心のいわゆる"講道館柔道"であり、本書のそれとは異なる競技であるという点です。
7校の大学のみで開催されている競技で国際大会は存在せず、いわゆるマイナースポーツであることは間違いありません。
本書は半ば私小説でもあり、著者の増田俊也氏が北海道大学時代にこの七帝柔道の競技者だった経験を小説化したものです。
それだけに小説中で行われるルールの説明は適切で分かりやすく、七帝柔道の予備知識が無くとも作品の面白さにまったく差し支えありません。
同氏による「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」では木村が(七帝柔道の前身である)高専柔道で優勝する過程が紹介されていますが、こちらが全体的にシリアスで重厚なノンフィクションとして書かれているのに比べ、本書は熱血青春小説としてエンターテイメント性が高い作品になっています。
個人的に青春、スポーツと来れば次に野球を連想してしまいますが、甲子園のように世間から注目される大舞台がなくとも、青春のすべてを七帝柔道に捧げる若者たちの姿が魅力的に書かれています。
もちろん著者の技量もあるでしょうが、壮絶な練習量の中で何度も絞め落とされ続ける日々、"カンノヨウセイ"と呼ばれる新入生への過激な伝統行事、先輩や同級生との確執や、それを乗り越えて築かれた固い絆など自身の濃厚な体験が何よりも大きな要素になっているのは間違いありません。
小説のクライマックスは年に1度開催される7校が一堂に会する"七帝戦"であり、1チームあたり15人の団体戦で日本一が争われます。
この団体戦が柔道といえば個人競技という固定概念を完全に吹き飛ばし、七帝柔道が完全なチームスポーツとして描かれています。
勝っても負けても4年生が引退するこの大会にすべてを賭けてきた男たちの戦いは、1本のみが勝利の条件となるこの競技においてはより壮絶なものになります。
絞め落とされようが、腕を折られようが自ら負けを認める"参った"を誰もせず、もはやスポーツというよりは自分の全存在を賭けた戦いといった方が相応しいものです。
個性的なメンバーたちがそれぞれの想いを持って試合に望む姿は、感情移入せずにはいられません。
長く苦しい練習の日々、勉学よりも遊びよりも柔道を優先させた青年たちの日々は他の学生から見ると理解しがたい存在だったはずです。
それでも柔道を通じて学び成長してゆく彼らは、何物にも代えがたいものを得たはずです。
目には見えなくとも大切なものを読者へ教えてくれる青春小説です。
