人生にとって組織とはなにか
著者の加藤秀俊氏は社会学者であり、"組織"についてその性質や仕組みについて理論的に説明できる専門家ということになります。
ただし本書は、強い組織を作るハウツー本や、組織の中で頂点に昇り詰めるための自己啓発本ではありません。
縄文時代の原始的な組織にはじまり、封建時代の地縁を中心とした組織、そして明治以降近代の社縁を中心とした組織が形成されるまでの歴史を語っています。
その中で一番紙面を割いているのが、読者の大半がサラリーマンであることを想定して"会社"という組織へ対する説明です。
学術的な用語はほとんど登場しないため非常に分かり易い一方で、本書から目新しい視点や考えを得ることもありませんでした。
本書は1990年に出版されています。
よって本書で論じられている"会社"は、インターネット登場以前ということもあり懐かしい昭和のサラリーマン像を思い出させるものになっています。
令和の時代にとって実用的な本とは言い難いですが、人間が社会的な動物である以上、テクノロジーが発達し時代が進んでも組織の本質的な部分は昔から大きく変わっていないはずです。
私自身、会社、サークル、町内会など色々なものが当たり前になり過ぎてしまい、本質的な意味でそれらを"組織"として意識して考える機会が殆ど無かったのも事実です。
そのきっかけを与えてくれただけでも本書の価値があるような気がします。