関ヶ原連判状 下巻
西軍、東軍陣営に分かれた天下分け目の戦い(関ヶ原の戦い)が始まろうとする中、細川幽斎が中心となって第三の勢力を作り上げようという謀略の全貌に迫った作品です。
本来であれば幽斎自らが東西を奔走して計画を作り上げるのが一番分かりやすいのですが、なにせ彼の年齢は60台後半という当時ではかなりの高齢であり、彼に変わって手足のように動く駒が必要になります。
そこで登場するのがもう1人の主人公ともいうべき石堂多聞です。
彼はかつて越前の白山神社直属の戦闘集団・牛首一族の出身であり、信長によって派遣された柴田勝家の一向一揆鎮圧の際に一族が殲滅された際の生き残りという設定です。
用心棒のような役回りですが、その前に石田三成配下の猛将・蒲生郷舎(源兵衛)が幽斎の陰謀を暴くべく立ちはだかります。
作品を通じて各所で多聞たち一行が敵と渡り合う戦闘シーンが描かれることになりますが、つい最近まで津本陽の剣豪小説を読んでいたせいか描写の迫力不足が否めません。
また合戦についても西軍へ対して幽斎が立て籠もった田辺城の攻防戦の過程が詳しく書かれている程度です。
ただ本作品の主題はあくまで幽斎の仕掛ける謀略であり、こうした戦闘シーンは割り切って読むべき作品なのかも知れません。
少なくとも謀略についてはその過程がこと細やかに描かれており、勅令を得るための朝廷工作は幕末時代に通じるものがあります。
上下巻800ページにも及ぶ長編であり、幽斎が仕掛けた一世一代、最後の大博打ともいうべき謀略の全貌を解き明かすという知的好奇心は満たしてくれます。