日本縦断 徒歩の旅―65歳の挑戦
おもに戦場カメラマンとして長年に渡り活躍してきた石川文洋氏が、徒歩で日本縦断を行った記録を1冊の本にまとめたものです。
宗谷岬をスタート時点として日本海側の海岸線を歩いて南下し、最後は那覇市でゴールするというルートです。
津軽海峡、そして鹿児島~沖縄間はフェリーを使用しますが、それ以外は完全に徒歩です。
1日30キロを目標に150日間かけて日本縦断を行う計画ですが、体力の限界を追い求めるストイックなものではなく、どちからといえばコツコツと気楽に歩く旅という印象です。
仕事柄、途中で原稿を書かなければいけないときは連泊して原稿を仕上げ、久しぶりに友人と再会して祝杯を交わすなど比較的自由な旅といえるでしょう。
著者自身、今回の目的を「歩いて旅をしたい」という単純な動機であることを告白していますが、各地の風景や人びとの生活をカメラに収めながらの行程を楽しんでいます。
ただタイトルにある通りスタート時点で著者は65歳という年齢であり、決して若いわけではありませんが、最近は60・70代でもマラソンやテニスなど、比較的激しいスポーツを続けている方も多い時代です。
本章は写真を掲載しつつ毎日の旅を記録した日記形式で書かれています。
また日記の合間に旅で感じたことをまとめたコラムを掲載しているため、内容が単調になることもなく、良くまとまった内容になっています。
持ち物や服装、シューズなど、これから徒歩の旅を始めてみようという人にとって有益な情報もあり、また宿泊した宿や食事なども紹介されています。
一方で、やはりというべきか日本の道路は車が走ることを最優先にした作りになっているため、たとえ国道であっても路肩が狭く整備されていない箇所も多く、身の危険を感じることもあったようです。
なお本書が出版されたのは2004年ですが、Webで著者の近況を調べてみたところ、今年(2019年)の6月には81歳にして太平洋側のルートで2回目の徒歩日本列島縦断を成し遂げたというニュースがありました。
さすがに80歳を過ぎての日本縦断には脱帽するしかありませんが、私も歩くのは嫌いでないので、将来"日本横断"くらいのチャレンジなら悪くないという気持ちにさせてくれます。