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柳生十兵衛七番勝負


タイトル通り、本書の主人公は柳生三厳(みつよし)こと、柳生十兵衛です。

津本氏の長編剣豪小説「柳生兵庫助」を本編とするならば、本作品は外伝という位置付けになります。

兵庫助と十兵衛は、2人とも石舟斎の孫にあたります。
ただし十兵衛の父・宗矩(五男)が、兵庫助の父・厳勝(次男)と歳が離れた兄弟ということもあり、この2人も親子ほどの歳の差があります。

柳生兵庫助」では将軍家剣術師範である父は家光をかわいがり、子の十兵衛には辛く当たったこともあり、手の付けられない乱暴者として成長します。

そして十兵衛は父よりも兵庫助の方を頼りにするようになり、父に代わって兵庫助が十兵衛を鍛え上げるという逸話が登場します。

個人的には楽しみにしていたのですが、残念ながら本作品では兵庫助が登場するシーンはありません。
ストーリーとしては、十兵衛が父から将軍家に対して不穏な動きをする諸大名たちの動静を探る隠密のような命令を受け、そこで剣豪たちと対決するというものです。

本作品では父へ対して反抗的な態度を見せる十兵衛は影を潜め、素直に任務に付いているようです。

たしかに文庫本で250ページ程度の分量ということもあり、細かいディテールに触れられないという事情があります。

よってタイトルに"七番勝負"とある通り、十兵衛と敵役との決闘シーンが各章のクライマックスとなり、テンポの良いストーリー運びと共に手軽に楽しめる作品になっています。

「柳生兵庫助」でも登場した "鳥飼い"、"無拍子"、"合撃(がっしうち)"、"活人剣"、"人中路" などの柳生新陰流独自の言い回しは健在であり、やはり合わせて読みたい作品であることは間違いありません。