レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

妄想銀行


長編小説やノンフィクション、難しいビジネス書などを立て続けに読むと頭が少し疲れてきます。

そんなときに読んでほしいのが、「ショートショートの神様」こと星新一氏の作品です。
マンガで例えれるなら、横山光輝三国志を読んだあとに4コママンガで気分転換をするようなものです。

1冊の文庫本に32編もの作品が収録されていますが、これでも平均的な収録数より若干少ない気がします。

1つ1つの作品が独立した設定とストーリーのため、まず同じ主人公は登場しません。
さらに登場人物に固有名詞もなく、短くて1分以内、長くても5分以内に読み終えてしまうため、そもそも長編小説のようにあらすじを記憶に留めておく必要さえありません。

そのせいか1冊を読み終えた直後にも関わらず、印象に残っているのは2~3作品程度しかありません。
より正確に表現すると、2~3作品以外のストーリーは思い出すことさえ出来ないのです。

にも関わらず、読み終わった後は妙に頭がスッキリした気がします。
ショートショート作品には、暇つぶし以上の医学的な効果があるのではないかと思ってしまいます。

ただしショートショートでさえあれば何でも良いわけではなく、読者を引き込む魅力がなければ暇つぶしにさえなりません。

もう1つ実感するのが、これだけの数のショートショートを読んでゆくと、自分にも同じような作品を執筆できるのではないかと思ってしまうことです。
しかしいざ試しにアイデアをひねり出そうとしても、星新一のような魅力あるストーリーを短い文章で書ける気がしないのです。

つまりショートショートは一見簡単そうに見えて、最低限の文字数で起承転結をわかり易くまとめ、かつ読者を楽しませなければいけない難易度の高いジャンルだと気づくのです。

ちなみに私が本書の中で印象(記憶)に残っている作品は、「信念」、「ねらった弱み」、「人間的」です。