レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

剣豪血風録



津本陽氏は多くの作品を残していますが、その中で私がもっとも好きなジャンルは剣豪小説です。

本書では10人の高名な剣客がそれぞれ短編の形式で登場し、彼らが会得した剣の真髄を垣間見れる構成になっています。

  • 塚原卜伝
  • 富田勢源
  • 伊藤一刀斎
  • 佐野祐願寺
  • 東郷重位
  • 小野次郎右衛門
  • 柳生兵庫助
  • 宮本武蔵
  • 柳生十兵衛
  • 堀部安兵衛

    • 剣豪好きでなくとも、知っている名前があるのではないでしょうか。

      作者自身が剣道三段、抜刀道五段の腕前を持ち、また武道全般にも通じているため、剣豪と言われた人たちが辿り着いた境地、命がけの修行や決闘の中で体得した神業、さらには剣客たちの息詰まる決闘シーンが非常にリアルに描かれており、かなり贅沢な1冊となっています。

      もともと本書のために書き下ろされた作品はなく、過去に発表された長編、短編の中から選りすぐりの部分を転載する形で構成されています。

      つまりこれから"津本陽"という作家の魅力を知りたいという方にとっては、うってつけの1冊といえるでしょう。

      私自身、読んだことのあるシーンが幾つか収録されていましが、それでも充分に楽しむことが出来ました。

      単純に著者の文章から伝わってくるスリルや緊迫感を楽しむという読み方がもっともシンプルだと思いますが、生死を賭けた勝負という場面における人間の心理状態、その勝負を幾度も制してきた剣豪たちに学ぶという点でも生半可な啓蒙書よりもはるかに役に立つ1冊であるように思えます。