レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

神田伯山対談集 訊く!


絶滅危惧職、講談師を生きる」に続き神田伯山先生(落語の真打ちは師匠、講談師の場合は先生と呼ぶ)の著書になります。

近場で開催された伯山先生の独演会に行く機会があり、そこで物販として置かれていた本書を思わず購入してみました。

満席の会場を枕で大いに盛り上げ、本編の講談も迫力ある内容で私を含め観衆全体を引きんでゆく様子がよく伝わってきました。

私はあまり演芸のことは詳しくありませんが、寄席で観た著者の師匠である神田松鯉先生が滔々と流れるような講談なのに対して、伯山先生はメリハリの効いた調子という印象があります。

本書は2019年から2022年にかけて断続的に週刊プレイボーイで連載された伯山先生と11名の各界の著名人との対談を書籍化したものです。

  • 又吉直樹
  • 弘中綾香
  • 宮藤官九郎
  • アントニオ猪木
  • 真島昌利
  • 北方謙三
  • 高田文夫、矢野誠一
  • 中村勘九郎
  • 中井貴一
  • 寺島しのぶ

芸能界に疎い私でも本書に登場する人たちを全員知っているほど有名な方ばかりが登場しており、目次を見ただけで豪華な対談集という印象を受けます。

著者が講談師であることを生かして、普通のインタビュアーとは異なる角度、つまり講談を含めた演芸の世界に重ね合わせたり、時には1人の芸人が腕を磨いてゆく上でのヒントを対談の中に求めてゆくというスタイルと取っています。

本書に登場する人たちの中で著者より年下なのはアナウンサーの弘中綾香氏1人ですが、彼女へ対してはアドバイスを送っている点も印象的でした。

また全編に渡って、著者がインタビュー相手のことをよく知っている(もしくは事前に調べた)上で対談に臨んでいるのが伝わってきたました。

当然、自分のことをよく知ってくれている人へ対しては機嫌良く対応するが人の心情というもので、対談が終始雰囲気良く進行しているのが紙面からも伝わってきます。

逆に対談相手は人によって講談に詳しい、詳しくない人に別れますが、話の流れの中で講談のことを相手へ簡潔に説明してゆく箇所もあり、講談に詳しくない読者もハードルを下げて本書を読むことができます。

ちなみに高田氏、矢野氏が講談に詳しいのはもちろんですが、ミュージシャンである真島氏が演芸全般に明るい点は驚きでした。

こうしたさまざまなジャンルの著名人との対談を通じて、講談そのものが世間一般へ認知されることを期待する著者の意図も充分に伝わってきて、楽しみながら読むことができました。

いずれにせよ肩肘張って読む類の本ではなく、1日1人ずつというマイペースでも良いので気楽に手にとって読んでゆくのがお勧めです。

私も並行して読んでいる長編小説がある中で、気分転換やちょっとした合間に本書を少しずつ読み進めました。

私自身は歴史小説や歴史そのものが好きなこともあり、そうした人にとって講談は非常に相性の良い演芸だと思っています。

一方で歴史へ関心がない人でも、任侠伝のようにストーリーそのものが単純に面白い読み物も数多くあり、とくに伯山先生の講談は初心者にとっても受け入れやすい魅力を持っています。

私も講談というジャンルが世間にもっと認知され、落語と同じように目にする機会が増えると良いなと願っている1人です。