ザ・ゴール 2 ― 思考プロセス
「ザ・ゴール」の続編です。
前作と同じように小説形式で書かれたビジネス書であり、主人公も同じくアレックス・ロゴです。
前作から10年が経過し、工場を建て直した実績のあるアレックスが副社長として株主の圧力により売却の危機を迎えたグループ会社を建て直すというストーリーが展開してゆきます。
著者があとがきで述べているように、前回が製造業の現場を舞台に繰り広げられた改善プロセスだけに、ともすれば工場で商品を製造するメーカー側の視点に偏りがちで誤解を招きかねない思考プロセスをより万人向けに書き直した1冊です。
本書で解説されている思考プロセスには幾つかのステップがあり、以下の5つから成り立っています。
- 現状問題構造ツリー 現状の問題点(好ましくない結果)を表面的に列挙し、根本的な原因に遡ります。どの問題を解決するのが最も効果的かという問い(=コアの問題)に答えるための手法です。このプロセスを経ることで複雑で多数の問題点が1つないし2つの原因へ集約することが出来ます。
- 対立解消図 一見すると解決不可能な対立や矛盾を含む問題構造の解消を図ります。コアな問題ほど大きな別の悪影響あるため実施されていないことが多く、その壁を乗り越えるための解決手法です。
- 未来問題構造ツリー コアな問題を解決するための画期的なアイデアを実行した結果の影響を検証します。つまり今までは存在しなかった新たな問題点の発生を未然に予測し、先手を打つことが可能になります。
- 前提条件ツリー 改善計画の実行計画です。計画を実行する上での障壁、それを克服するための中間目標を設けます。 計画を実行する上での前提条件を洗い出すことも含まれています。
- 移行ツリー 詳細な実行計画です。詳細な手順とその順番、その計画に関わるすべての人にどのようなリアクションが必要かを伝えるためのコミュニケーション・ツールとしても使えます。
一方で著者は、これらのステップをすべて経由する必要はなく、どれか1つを実施するだけでも充分に効果があるとしています。
いずれにしても本書は改善(問題解決)のための思考方法の手引書であり、ビジネスの現場に持ち込んだ途端に効果が出るような性質のもではありません。
ただし本書の思考プロセスを身に着けることで、ビジネスに限らず個人的な問題の解決にも役に立てるとが可能になります。
それは思考の習慣化に近いものであり、本書を1回読んだだけでは身に付けるのは難しいように感じます。
そのためにも手元に置いて何度か読み返したい1冊です。