レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

シェエラザード(上)

シェエラザード(上) (講談社文庫)


浅田次郎氏による長編小説。

謎の台湾人"宋英明"から、太平洋戦争末期に二千人以上の民間人と共に沈んだ「弥勒丸」の引き揚げ計画が町金を生業にする軽部と相棒の日比野の元へ持ち込まれるところから物語が始まります。

その「弥勒丸」には、時価二兆円もの金塊が積まれていました。

しかし時を同じくして複数の人物へ対しても引き揚げの依頼が行われていることが判明し、軽部たち一行と共に読者たちを混乱させます。

事態を把握しようする軽部は、新聞社に勤めている昔の恋人"久光律子"に協力を要請し、「弥勒丸」の引き上げ計画を実現すべく多くの謎と対面することになります。

やがて軽部の周りで「弥勒丸」引き揚げ計画に携わっている人物が謎の怪死を遂げていきます。

しかも手を下しているのは、依頼者であるはずの謎の台湾人。。。。

前半ではあまりにも多くの謎が立ちはだかり、なかなか読書のテンポが上がりません。


しかしこれらの謎は壮大なスケールの本作品の舞台装置のようなもので、その1つ1つのカラクリが明かされるにつれ、どんどん引き込まれてゆくこと間違いなしの大作です。


本土決戦が叫ばれていた太平洋戦争の末期になると日本の海軍はほぼ壊滅状態であり、各地で情報が寸断される混沌とした状況に陥り、それが"M資金"や"山下財宝"といった埋蔵金伝説を生み出す背景になりましたが、本作品はこうしたテーマを題材にした代表作であるといえます。