殺人者たちの午後
ジャーナリズム先進国といわれるイギリスで出版された本の和訳です。
内容は過去に殺人の罪を犯した人たちへのインタービューをまとめたノンフィクションです。
本書に登場する殺人者たちは、年齢や性別、職業、そして殺人の対象や動機も様々です。
イギリスでは死刑制度が廃止されており、終身刑が最も重い刑事罰です。
そのため当然ながらインタビューを受けた人たちの中に死刑判決を受けた人は存在せず、服役中の人もいれば、仮釈放され保護観察という形で社会復帰を目指している、もしくは遂げている人たちも存在します。
登人物はいずれも殺人を犯したことで一致していますが、それから一定の期間が経過している点でも一致しており、自分の生い立ちから殺人に至るまでの経緯、そして服役がもたらした心境の変化を語っています。
過去の人生を清算して前向きに生きていこうとする人もいれば、未だに自分自身を信用することが出来ず、刑務所の中での隔離された状態を望んでいる人など、その後の人生の考え方は様々です。
注目すべきは、一貫して殺人という行為へ対しての後悔、そして程度の差こそあれ、人の命を奪ったことに対する罪悪感を持っているということです。
著者でありインタビューアーでもあるトニー・パーカー氏は、本書で私見どころか善悪へ対しても一切言及することなく、淡々と殺人者たちの過去と現在を綴っているに過ぎません。
それだけに読み手となる人たちに考えさせる内容になっています。
"殺人"は殆どの人たちにとって思いも付かない非日常的な行為です。
その一線を越えてしまった人たちを社会から隔離することは簡単ですが、時には殺人という最も重い罪を犯した人たちの心の声に耳を傾けることの重要さを世の中に問いかけているような気がします。