レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

裁判官の爆笑お言葉集

裁判官の人情お言葉集 (幻冬舎新書)


裁判官は"法の番人"であり、一切の私情を挟まず冷静に法の執行を司るべき存在です。

しかしながら人を裁くという行為は、裁く側も人間である以上、その重責は決して軽いものではなく、本書では時に裁判官が心情を暴露た数々のエピソードが100以上も収められています。

そんなエピソードを少し紹介したいと思います。

  • 「控訴し、別の裁判所の判断を仰ぐことを勧める。」
死刑が制度として存在し、且つ過去の事例から刑の重さが決定される(量刑相場)が慣例である日本において、時には死刑を言い渡さざるをえなかった裁判官のためらいが垣間見れます。

  • 「今、ちょうど桜がよく咲いています。これから先、どうなるかわかりませんが、せめて今日一日ぐらいは平穏な気持ちで、桜を楽しまれれはどうでしょうか。」
政治資金規正法違反で起訴され、無罪判決を言い渡したあとの言葉です。無罪とはいえ逮捕・起訴された人が社会復帰を行うための前途は困難な場合があり、裁判官の人間的な優しさがにじみ出ています。

  • 「母親の愛情は、海よりも深いといいます。この言葉を噛み締めてください。」
子どもを放置したまま2連泊し、乳児が死亡した事件の判決を言い渡した後の言葉です。様々な種類の事件の中で、無力で唯一頼るべき親から虐待を受ける子どもの事件に一番のショックを受けます。短いですが、深い意味が込められています。

このような形で本書で紹介されている言葉は比較的深刻なものが多く、タイトルの「爆笑お言葉集」には違和感を覚えますが、裁判官をユニークな視点で描いた興味深い1冊でした。