レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

デッドライン仕事術

デッドライン仕事術 (祥伝社新書)

女性向け下着メーカーであるトリンプ・インターナショナル・ジャパンの元代表取締役副社長であり、同社を19期連続増収・増益に導いた吉越浩一郎氏による著書です。

副題に~すべての仕事に「締切日」をいれよ~とある通り、彼のマネジメントの最大の特徴は、時間に重点を置いたものです。

過去にも著者は同様の本を執筆していますが、本書ではその内容がより研磨されており、新書という分量でありながらも余すことなくその手法を伝えてくれます。

まず本書の序盤で、日本の会社における"残業"の恒常化を指摘しています。
更には"残業"をしても消化される仕事の分量が増える訳ではないとし、むしろ非効率なものと切り捨てています。

もちろん普通は「より長い労働時間=より多くの成果」という考えが普通ですが、それは幻想に過ぎず、むしろ効率性が本質(仕事の品質・量)を左右するとしています。


本書で特筆すべきは、効率を上げるための最大のポイントは「決断までの所要時間を短くする」ことだと説いています。

何かを決断するときに、色々と議論を重ねている時間は一見すると有意義な気がしますが、実際には何の進展も無いまま過ぎ去っていく無駄な時間であると断言しています。

同時に"根回し"と言われる水面下での調整についても無用であるとし、責任を伴う決断はあくまでもトップダウンで素早く下されるべきだとしています。

大きく複雑な問題へ対しては、「エメンタールチーズ化」というユニークに表現を用いていますが、要するに問題を小さな破片に分解してしまい、その積み重ねで簡単に処理できるとしています。

つまり小さな決断と実行そのものが個々のタスクであり、そのタスクの期限を厳密に定めることがデッドライン仕事術に極意であるといえます。

私自身の解釈は、ビジネスの場はチャンスやピンチが瞬く間に訪れる戦場のようなものであり、その現場の責任者たちが素早く決断しなければ生き残ることが覚束ない厳しい環境であるということです。