レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

すべての愛について

すべての愛について (幻冬舎文庫)

浅田次郎
氏の対談を1冊の本にまとめたものです。

対談相手は同業者(作家)に留まらず、俳優評論家など職業、年齢も様々な著名人との対談が収められています。

対談内容は特定のテーマが定められている訳ではなく、小説歴史家族ギャンブル政治など多岐に渡っています。

浅田氏は現代を舞台にした小説が多いですが、歴史小説も多く発表しており、多くの作品がテレビ・映画化されている日本の代表的な作家の1人です。

しかし時代背景に関わらず人間の喜怒哀楽を鮮やかに描き上げる人情味溢れた作風は、多くのファンを読者に持ち、「平成の泣かせ屋」としての異名があります。

浅田氏は戦後間もない団塊世代の生まれです。

親が資産家であったため幼少期は何一つ不自由なく育ちますが、学生時代に家が破産したため、働きながら学費を稼ぐといった苦境を経て自衛隊へ入隊ます。

その後も商売で成功したり、かと思えば1億円の借金を作ったりと、その人生は波乱に満ちています。

そんな中でも学生時代から一貫して続けてきたのが小説の執筆です。
40歳近くになってからの遅咲きの作家デビューでしたが、直木賞をはじめとした各賞を次々と獲得してゆきます。

はじめに浅田氏の人情味溢れた作品を読んだとき穏やかで寡黙な、いかにも作家風の人物像を想像していましたが自衛隊にいた経歴からも分かる通り、体育会系の骨太な性格をしています。

あとがきで浅田氏自身が触れていますが、小説は作者の創作力を作品にしもので後世に残りますが、対談で自分自身の考えを直接的に発言したものが書籍化される機会は少なく(殆どが雑誌に掲載されて忘れられてしまう)、著者自身がもっとも興味深く本書を読むことできる読者だと語っています。

本書はあくまでも浅田次郎ファンのための対談集という位置付けとなり、私もファンの1人として楽しく読ませてもらいました。

浅田次郎氏の作品をよく知らない人であれば、まずは本書よりも実際の作品を読むことをお勧めします。