レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

マルドゥック・スクランブル The 1st Compression

マルドゥック・スクランブル The 1st Compression 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)

冲方丁氏の代表作といえるSF小説であり、第24回日本SF大賞(2003年)を受賞した作品です。

SFにも様々なジャンルが存在しますが、その中でも特にサイバーパンク色の強い作品です。

"サイバーパンク"の世界観は主にアメリカで確立した分野ですが、少女が主人公となりマッチョな敵と対峙する構図は、日本のアニメ文化の影響も見受けられ、日本独自色の強いサイバーパンク小説です。

舞台は「マルドゥック・シティ」と呼ばれる近未来の都市。

テクノロジーの進化により人間の脳や身体を改造する様々な技術が開発されましたが、大きな戦争で人類を脅かす脅威として、それらの技術は禁忌となりました。。

しかし犯罪に巻き込まれた1人の少女の命を救うべく「マルドゥック・スクランブル09法」という禁じられた科学技術の特別使用が認められ、やがて少女は通常の人間を超越した能力を手に入れることになります。

具体的な内容は次回以降のレビューで触れてゆきたいと思いますが、長編小説にも関わらず世界設定や社会的な仕組みに関しては曖昧な記述に留めてあり、状況描写や登場人物の心理描写に多くのページを割いています。

また映画「マトリックス」的な戦闘シーンを小説上で展開する執筆力は、サイバーパンク好きにはたまらないのではないでしょうか。


SF小説に関してはアメリカの影響を強く受けている私にとって、最初は未成年の少女が主人公という設定は抵抗を覚えますが、次第に作者が強いこだわりを持って描き上げた作品の世界へ引きこまれてゆきます。