ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく
"ホリエモン"こと堀江貴文氏による1冊です。
ライブドア(オンザエッジ)の創業者としてプロ野球球団やニッポン放送買収などで世間の注目を集め、やがて証券取引法違反により逮捕されるという彼の経歴はあまりにも有名です。
拝金主義者として軽蔑する人がいる一方で、ネットの世界では未だに絶大な支持を得ています。
堀江氏の著書を今まで数冊読んでいますが、"過激"だと感じたことはありません。
その内容は常に物事の本質をつく洞察力に優れており、社会に潜む"矛盾"を白日の下に晒すといった鋭さがあります。
その"矛盾"の中に潜む既得権益層を警戒させ、さらに彼の合理的なビジネス手法を理解できない保守的な人たちからの批判の矢面に立たされたという見方もでき、堀江氏自身もそれを自覚しているようです。
その他にも、独特の発言やスタイルに誤解を生むような要素もあったでしょう。
彼は転んでもタダで起きる人物ではありませんし、本書では刑期を終えた堀江氏が"ゼロからの再出発"をきっかけにして執筆したものです。
そして本書のテーマは「働くことの意味」です。
本書の前半では堀江氏自身の生い立ちや、親との軋轢、学生時代のエピソードなどを自らが抱えていたコンプレックスを含めてかなり本音ベースで書いている印象を受けました。
服役を終えた堀江氏は以前のように上場企業の経営者ではありませんが、早速ベンチャー企業を立ち上げ、その他にも色々な仕事を兼任し、分刻みのスケジュールで目まぐるしく日常を送っているようです。
それは決してお金のためでなく、やりたいことを全部やるためだとしています。
人生でもっとも貴重なものは「時間」であり、その時間を提供して(犠牲にして)給料をもらうような働き方自体が、そもそも「お金に縛られた生き方」というのが彼の主張です。
たしかに世間の会社員の大半が「お金に縛られた生き方」をしていることは認めざるを得ません。
「会社は潰れても人は潰れない」、「(自営業を含めるなら)日本の就業者の15人に1人は経営者」という分かり易い例を挙げて起業することのリスクの無さ、そして仕事がつまらないのは、「仕事に没頭していないから」といった、日本のビジネスマンが普段見逃しがちな視点を読者へ与えてくれます。
結論として、彼は「自分の生を充実させるために働く」としています。
人生の頂点から、一気に急降下した人生。
それでも生きている限り、人生に"0(ゼロ)""はあってもマイナスはない。
毎日小さな挑戦を繰り返して、自分へ"小さな1(イチ)"を積み重ねることがもっとも大切であり、その後の飛躍(掛け算)の結果が大きく違ってくるのです。
働くことがテーマでありながら、本書はビジネス書というよりも堀江氏の人生観を綴ったエッセーという感じです。
将来の進路に迷っている人、「働く」ことに迷いを抱いているビジネスマン、そうした人たちへ向けて分かり易く明快な言葉で書かれれいる本であるため、気軽に手にとって読んでみてはどうでしょうか。