レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

薔薇盗人

薔薇盗人 (新潮文庫)

以下6作品が収められている浅田次郎氏の短篇集です。

  • あじさい心中
  • 死に賃
  • 奈落
  • 佳人
  • ひなまつり
  • 薔薇盗人

私にとって浅田次郎氏の短編は、その題材を問わず決して期待を裏切らない小説です。

もちろん今回紹介する本を読み終えてもその印象は変わりませんでした。

勝手に本作品のテーマを決めさせてもらえるなら、それはズバリ"恋愛"であるといえます。

直球勝負もあれば、もの凄い変化球の恋愛小説までが揃っており、著者はまるで1つの素材から多彩な料理を作り出す凄腕の料理人といった感じです。

たとえば「あじさい心中」はタイトルから分かる通り、目的を失った行き連れ男女の心中を扱った文学らしい作品ですが、それでいながら浅田氏らしいドラマチックなストーリーに仕上がっています。

また「奈落」に至っては、恋愛と関係ないミステリアス内容で物語が進行してゆきますが、その根底(バックボーン)には、やはり男女の恋愛というテーマがしっかりと存在していることに気付かされます。

「ひなまつり」は著者のもっとも得意とする人情を交えた泣かせる恋愛小説に仕上がっていて、著者の本領が発揮されている作品です。

とにかく1冊の本でこれだけ様々なストーリーを楽しませてくれる本書は私のように浅田氏のファンでなくとも、満足できること間違いなしです。