レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

人に強くなる極意

人に強くなる極意 (青春新書インテリジェンス)

元外務省官僚(外交官)である佐藤優氏が、おもに対人関係をテーマに執筆したビジネス書です。

今まで佐藤氏の著書は、日本とロシアを中心とした外交や政治、国際情勢をテーマにしたものしか読んでいませんでした。

"外交"は国家間の交渉の場ですが、基本的には"対人交渉"によって行われます。

海千山千の要人たちとの折衝は、人としてのタフさが必要とされる場面であり、著者の外交の最前線での経験を元に書かれているため説得力を持っています。

一方で政治から宗教、哲学まで専門的な内容が出てきた今までの作品と違い、著者も「私の著述の中ではもっとも読みやすい記述になっているはずだ。」と紹介していることもあり、より幅広いビジネスパーソンが読める内容になっています。

目次も大変分り易く、以下のような章で構成されています。

  • 第1章 怒らない
  • 第2章 びびらない
  • 第3章 飾らない
  • 第4章 侮らない
  • 第5章 断らない
  • 第6章 お金に振り回されない
  • 第7章 あきらめない
  • 第8章 先送りしない

本書は実用的であることを意識してあるため、分り易く具体的な内容で書かれています。

しかし内容はシンプルであっても実践はそれほど簡単ではありません。

例えば本書から引用する次の一文からもそれは分かります。

結局、飾らない力を得るには、自分が何者であるかを明確にするということに尽きると思います。
人間としての根っこがどこにあるのか、国や民族、故郷や家族、信条や哲学・・・・・・。

あなたにその軸はありますが?軸がはっきりしているからこそ、虚と実のはざまでどんなに揺れ動いても、飾らない自己、飾らない関係をつくることができる。

佐藤氏に軸があったからこそ、ハードな交渉や512日間にわたる勾留で検察の執拗な追求に対して妥協しなかったのです。

やはり自分をいかに成長させるのかが重要になってくるのであり、あくまで本書はそのヒントを与えてくれるものとして読むのが正しいと思います。

2時間もあれば充分読める新書ですが、その示唆するところは非常に深い1冊です。