レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

アイム・ファイン!



日本を代表する作家浅田次郎氏のエッセーです。

本書はJAL機内誌「SKYWARD」で連載されているエッセーを文庫本として刊行したものです。

読者の多くが旅行者であることも関係して、その内容は著者自身の海外体験記が比較的多いようです。

著者は大人気作家だけあって何本もの連載を掛け持ちし、その必然の結果として締め切りに追われる忙しい日常を過ごしているようです。

それでも根っからの旅行好きであり、締め切りの合間を縫うようにして取材旅行、時には趣味のための旅行へ出かけてゆきます。

趣味はもっぱらギャンブルであり、ラスベガスでは常連かつVIP待遇という身分であり、国内旅行でも行く先は競馬場が多いようです。

またファンたちを集った中国の旅行ツアーでは自らガイドを務めるなど、その旅行のほとんどは休養目的ではなく精力的な活動のために費やされています。

旅先で見かけた変わったアメリカ人や中国人を観察する著者の視点はあくまでもユーモラスであり、その中にさり気なく文化論を展開するところなどは、単純なおもしろエッセーとはひと味違うところです。

一方で自らのハゲ頭や増加してゆく一方の体重など、自虐的なネタもエッセーにしています。

自分のハゲ頭やデブといった何でもない話題で読者を喜ばせると同時に、これを読んだ中高年たちがいつの間にか励まされるような文章は浅田氏ならではです。

機内誌で連載されたエッセーということもあり、旅行のお供に携帯してリラックスしながら読むことをお薦めします。