レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

人生賭けて



2012年に現役を引退し、今シーズンから阪神タイガースの監督に就任した金本知憲氏の自伝です。

2015年の流行語大賞にもなった「トリプルスリー」を2000年に達成しており、強打者としてすばらしい記録を残しましたが、もっとも注目すべきは1492試合連続フルイニング出場という世界記録であり、未来永劫この記録を塗り替える選手は出てこないと思えるほど圧倒的な記録です。

しかし金本氏自身が一番誇りとしている記録は、どんな時にも手を抜かず一生懸命プレーしてきた証である1002打席連続無併殺記録であり、こうした野球へ対する真摯な姿勢が本書のタイトルにも現れています。

チームや熱心なタイガースファンからは「アニキ」の愛称で親しまれ、ここにも長年に渡り信頼される選手であり続けた証を垣間見ることができます。

そんなスター選手として活躍した金本氏ですが、本書では21年間にわたるプロ野球生活をずっと苦しかったと振り返っています。

現役時代から妥協を許さないストイックな選手として知られていましたが、シーズン中はもちろんオフシーズンのトレーニング、日常の食生活、骨折しながら試合に出場し続けた姿を知っているだけに説得力のある言葉です。

長年に渡りヤクルトスワローズの名遊撃手として活躍した宮本慎也氏も引退時に「今まで楽しく野球をやったことはありませんでした。」と発言したことからも分かる通り、プロ野球の厳しさを物語るエピソードでもあります。

本書の副題である"~苦しみの後には必ず成長があった~"から推測できる通り、金本氏はアマチュア時代には注目を集める選手ではありませんでした。
むしろ学生時代に何度も挫折を味わい、浪人時代を経て大学へ進学した経歴は、プロ野球選手として珍しいほどの苦労人であることが分かります。

後輩である鳥谷選手新井(貴浩)選手へ対してもトレーニングの重要性はもちろん、常にチームのために全力でプレーすることをアドバイスする姿からは、チームの勝利への執念が感じられます。

そんな金本氏が憧れ、そして自らの引退時に花束を贈呈されたのが清原和博氏であり、多くの野球人が憧れた清原氏の更生を願わずにはいられません。

最後の方に「今後の阪神に期待すること」という章がありますが、引退しても古巣への愛着を持ち続けた金本氏が阪神タイガースの指揮を執るのは偶然ではなく必然だといえるでしょう。