古田式・ワンランク上のプロ野球観戦術
3月に入り、各地でオープン戦が開催され、月末にはいよいよ2016年のプロ野球シーズンが開幕します。
本書では元プロ野球選手であり、野球解説者である古田敦也氏が、プロ野球というエンターテイメントの魅力をワンランク上の観方で楽しむ方法を紹介してくれます。
プロ野球ファンへ向けての啓蒙書と捉えることもできるでしょう。
古田氏は現役時代にヤクルトスワローズの正捕手として長く活躍し、ID野球を提唱した野村克也監督の一番弟子としても知られています。
キャッチャーは野球の全ポジションの中でもっとも守備の負担が大きいと言われていますが、日本では捕手が投手へサインを出すことが一般的であり、しゃがんで投手のボールを受け続けなければなりません。そして盗塁の阻止、時にはチーム守備の支持を出すなど、その役割は多岐に渡ります。
そのためには対戦する打者の癖、味方ピッチャーの特徴などの情報を頭に入れて置かなければなりませんし、ゲーム全体の状況を把握しなければならないもっとも頭脳を必要とされるポジションなのです。
それだけに「キャッチャー出身には名監督が多い」と言われていますが、キャッチャーとしての経験豊かな古田氏の解説だけに説得力があるのではないでしょうか。
まずはピッチャーの観方から入り、投球フォームの違いによる特徴、球種、そして田中将大やダルビッシュ有など一流ピッチャーの条件について言及しています。
続いてバッター、守備、最後に監督の戦術についてまで幅広く解説してくれます。
「なぜカーブを投げる投手が少なくなったのか?」、「イチロー、青木のインコース打ちの技術」、「遊撃手の動き」、「プロとアマチュアの監督の違い」などなど、野球ファンであれば興味をそそること間違いなしの解説が並んでいます。
ただし新書という形式のため、野球観戦の魅力を伝えきるためには圧倒的に紙面が足りないと感じるたのは読者だけでなく、古田氏も同じだったはずです。
古田氏が言及していない観戦術を1つ加えるとするならば、野球へ対する考えは選手、解説者であっても個性が現れるということです。
本書などを通じて解説者の特徴が分かってくると、野球中継の解説にもその個性が反映され、選手やプレーへの評価や指摘するポイントにも微妙な差が出てくるため、個性的な解説の雰囲気を楽しむことができます。
野球の魅力を伝えてくれる本は他にも数多くありますが、キャッチャーとして、バッターとしても2000安打を達成するなど一流選手だった古田氏のファンであれば必読の書であるといえます。