半パン・デイズ
小学校入学を前に、東京から瀬戸内の小さな町に引っ越してきたヒロシ少年。
本書はそんなヒロシ少年の小学校6年間を描いた青春小説です。
このヒロシ少年は、著者である重松清氏自身の小学生時代を部分的にモチーフにして組み立てられています。
重松氏は私よりも一回りは上の世代ですが、それでも"昭和"に小学生時代を過ごしてきた私にとって、作品中で描かれる景色はどこか懐かしく、読み進めてゆくと何度もヒロシ少年の姿を自分自身に重ね合わせてしまう場面が何度もあります。
この作品には、いじめ、ケンカ、勉強や遊び、初恋、大人に褒めら、叱られ、友達や親族との出会いや別れといった多くの経験を通して、少年が少しずつ成長してゆく軌跡がぎっしりと詰まっています。
小学生は"世間"を知りません。
この"世間"とは"大人の世界"と言い換えてもよく、大人が何気なく過ごしている日常が感受性豊かな小学生にとっては新鮮な日々なのです。
ヒロシ少年の体験を繊細に描いてゆく"大人の重松氏"の力量に驚きつつも、どんどん物語に引きこまれてゆきます。
またヤスおじさん、チンコばばあ、親友の吉野、シュンペイさん、タッちんなどなど、、多くの個性豊かなキャラクターが登場し、彼らを通じてヒロシが内面的に成長してゆき、いつの間にか広島弁もすっかり板についてゆく過程は時に涙やほろ苦さもありながら、最後には清々しい気持ちにさせてくれます。