くちぶえ番長
小学四年生ツヨシの通う学校に突如転向してきたマコト。
マコトは転校初日にいきなり「川村真琴です。わたしの夢は、この学校の番長になることです」とあいさつします。
そう、マコトは女の子だったのです。
ほとんど人は転校生を迎えた経験が1回くらいはあると思いますが、本書は著者の重松清氏が主人公と同じ年齢のときに経験した転校生、それも1年足らずで再び転校してしまい現在に至るまで二度と再会することのなかったクラスメートとの思い出を元に書き上げた物語だと告白しています。
はじめのぎこちない関係から、少しづつ距離が近づきやがて2人が親友になってゆくまでの過程が日々の出来事とともに友情物語として綴られています。
本書に登場するエピソードは、男女問わず多かれ少なかれ誰にでも小学生時代を思い出させてくれます。
こうした小さな物語の積み重ねで大きなテーマを書き上げる重松氏の腕前は一流であり、ストーリーそのものはシンプルでありながらも約200ページの作品ということもあり、1時間半もあれば夢中になって読み終えてしまうでしょう。
束の間かもしれませんが、この作品は読者を少年少女時代に戻してくれるのです。