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柳生兵庫助〈2〉


津本陽氏の描く長編大作・柳生兵庫助の第2巻です。

前回は内容について殆ど触れませんでしたが、今回は少しストーリーに触れてみます。


物語は兵庫助の少年時代から始まります。
のどかで自然豊かな柳生の里で兵庫助は育ち、剣豪として日本中に名を馳せた祖父・柳生宗厳は健在であるものの、老齢ということもあり"石舟斎"と号して半ば隠居生活を送っていました。

もちろん兵庫助も幼少の頃より剣の修行に打ち込み、青年になる頃には非凡な才能を見せるようになります。

この噂を聞きつけた加藤清正が兵庫助を兵法師範として熊本に迎えることになります。
しかも実高三千石という破格の待遇です。

これは兵庫助の剣術が優れていたこともありますが、戦国大名たちにとって"柳生"という名の持つブランド力によるところが大きかったと言えます。

しかしここで兵庫助が清正へ仕え続けてしまってはストーリーが面白くなりません。

兵庫助は熊本で発生した百姓一揆を鎮圧する際、同じ清正の家臣であった伊藤長門守と言い争いになり最後には斬ってしまうのです。

伊藤に限らず、加藤家の中には若輩の新参者(兵庫助)が厚遇されていることを嫉妬している家臣たちもいたのです。

兵庫助にとって剣の道を極めることが最も重要であり、複雑な人間関係の中で他人を出し抜いて出世することに興味は無かったのです。

結果的に1年足らずで加藤家を退転し、修行のために諸国流浪の旅に出ることになります。


剣で他者に遅れを取ることはないと自負していた兵庫助ですが、最初に訪れた小倉の細川家に使えていた老剣士・疋田豊五郎の前に敗北を喫することになります。

老齢ではあるものの豊五郎は祖父・石舟斎とともに、かつての上泉信綱の直弟子でもあり、師匠より自らの流派を開くことを許されるほど高名な剣豪でした。

簡単に言えば先輩に鼻っ柱をへし折られた形ですが、同時に若い兵庫助にとって世間が広いことを痛感した出来事でもあり、ますます剣術修行に励むきっかけになった敗北でもあったのです。