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柳生兵庫助〈4〉


数々の戦いに勝ち続け、各地にいる達人を訪ねながら修行を続けてきた兵介は、柳生の里へ帰ってきます。

もはや兵介の剣の腕は新陰流の三代目を継ぐに相応しいレベルにまで達していましたが、祖父・石舟斎の勧めで十津川金龍院で薙刀を学ぶことになります。

武芸に飽くなき情熱を持っていた兵介は剣のみならず、剣が苦手とする薙刀や槍の扱いにも熟練することで自らの剣を完全無欠にする意欲があったのです。

兵介の祖父・石舟斎の盟友であった胤栄は宝蔵院流槍術の創始者でしたが、お互いに剣と槍の技量を磨き合った関係であったことを考えると当時としては自然な流れでもありました。


山深い十津川へ薙刀を習いに出向くのですが、そこで隠遁生活を送っていた棒庵という老人に兵介は手も足も出ないという経験をします。

ここまでの完全な敗北は疋田豊五郎と対峙して以来でしたが、ともかく兵介は棒庵の元で新当流薙刀術の奥義を学ぶことになります。

それは手取り足取りの修行ではなく、修験道の行場としれ知られている笙ノ窟(しょうのいわや)に百日間籠もるというものでした。

やはり剣豪の修行には山篭もりが似合います。

私たち一般人からすると山篭もりをして強くなる理由が今ひとつ理解できませんが、共通するのは大自然の霊気を受けて感覚が研ぎ澄まされる、欲望を消し去ることで不動心を得られるといった精神修行であり、現代スポーツで言うところのメンタルトレーニングに近いのかもしれません。

本作品において、兵介が山籠りを終え柳生の里に帰還した時点で最強の剣士になったと言えそうです。
そしてそれは最強の敵が兵介たちの前に現れることを示唆する伏線でもあったのです。