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ひとつ海のパラスアテナ (2)


前作で2人の少女アキタカが30フィート級のヨット"パラスアテナ号"に乗り込み、大海を冒険した日々から1年後を描いた続編です。

もちろん同じメンバーで冒険の続きが始まるものと思っていった読者も多いと思いますが、意外な展開でストーリーの幕が上がります。

それは主人公アキが、海賊団ウィッチファミリーの一員として登場するからです。

本ブログではネタバレとなるようなストーリーの詳細を紹介することは避けますが、簡単に言えばアキは再会を約束した相棒のタカと離れ離れになり、愛船であるパラスアテナ号を失ったどん底の状態にいたのです。

言わばピンチから這い上がってゆく過程を描いてゆきますが、前作と比べて本作品では一気に登場人物が増え、ストーリーも多様になり、本格的な冒険が始まったという印象を受けます。

はじめはアキと敵対的だった人物が少しずつ仲間となり、強大な敵へ立ち向かってゆくというストーリーは他の冒険小説にもありがちな展開ですが、やはり大海原という独特の世界を舞台にしているということが、ありきたりのストーリーとは一味違った作品に仕上げています。

本シリーズは、陸地が海面に沈んだ"アフター"と呼ばれる世界が舞台ですが、魔法のような特殊な能力が存在するわけではなく、登場人物たちは今の我々とそう変わらない人間です。

そんな彼らにとって強力な武器といえば、かつて陸があった"ビフォー"の時代に発達していたテクノロジーの力を利用する場面であると言えます。
それは主人公たちをピンチに陥れることも、逆にピンチから脱出させてくれることもある諸刃の剣でもあるのです。

本書では最後に予想外の急展開が待っており、次の第3巻と1つのストーリーでつながっています。

第1巻はストーリーがシンプルに構成されており、その分完結した作品としても楽しめますが、本書を手にとった人は次巻も入手せずにはいられないでしょう。