植村直己、挑戦を語る
植村直己。
日本が輩出してきた数多くの冒険家の中で燦然と輝く名前であり、世界初の5大陸山岳の最高峰登頂者、単独での犬ぞり北極点初到達、グリーンランド初縦断など数々の偉業を成し遂げたました。
当然のように一躍時の人となると著名人との対談が企画されましたが、本書はその中から文藝春秋社が選りすぐった記事が掲載されています。
以下が対談相手となった人たちの一覧ですが、約40年前の対談にも関わらず私でも知っている人が殆どという豪華な顔ぶれです(西暦は対談が行わた年です)。
- 加藤芳郎(漫画家) - 1971年
- 石原慎太郎(作家) - 1976年
- 五木寛之(作家) - 1976年
- 王貞治(プロ野球選手) - 1977年
- 三浦雄一郎(冒険スキーヤー) - 1978年
- 堀江謙一(ヨットマン) - 1978年
- 遠藤周作(作家) - 1978年
- 開高健(作家) - 1978年
- 伊丹十三(映画監督) - 1978年
- 小西政継(登山家) - 1979年
- 藤井康男(龍角散社長) - 1980年
- 井上靖(作家) - 1981年
- 榛名由梨(宝塚歌劇団) - 1982年
- 早川種三(実業家) - 1983年
- 大貫映子(ドーバー海峡横断スイマー) - 1983年
- 西堀栄三郎(南極越冬隊初代隊長) - 1983年
- 多田雄幸(ヨットマン) - 1983年
五大陸最高峰登頂に成功したのが1970年、そして1984年にマッキンリー冬期単独登頂後に消息不明(のちに死亡と認定)になったことを考えると、植村が活躍した時代がまんべんなく網羅されているといえます。
彼の冒険スタイルの特徴は、単独行であるという点です。
これだけの冒険を1人で挑戦するからには強靭な肉体を持った外見を想像しがちですが、実際には小柄で人懐っこい顔をした好青年というイメージです。
まず街を歩いていも彼が世界的に有名な冒険家であるとは誰も思わないでしょう。
加えて面白いのは、植村は自分を「落ちこぼれ」、「気が弱い人間」と評価している点であり、これは彼が有名になってからも変わることはありませんでした。
実際に対談内容を読んでみても"勇敢"という印象はなく、"素朴で実直"という言葉がぴったりとくる人柄が伝わってきます。
それでもなぜ植村直己が大胆な挑戦を成功させてきたのか。
そのヒントが本書に収録されている各分野の著名人たちの対談の中に隠されているような気がします。