そら、そうよ ~勝つ理由、負ける理由
プロ野球選手として主に阪神タイガースで活躍した岡田彰布氏の著書です。
以前に本ブログで岡田氏の「頑固力」を紹介しまたが、こちらは主に阪神タイガースの監督としての経験を踏まえた采配や選手の起用といった話題が中心でしたが、本書で語られるのはスバリ組織論です。
本書の内容を紹介する前に岡田監督の成績を見てみます。
- 阪神監督時代
- 2004年 4位(Bクラス)
- 2005年 1位(Aクラス)
- 2006年 2位(Aクラス)
- 2007年 3位(Aクラス)
- 2008年 2位(Aクラス)
- オリックス監督時代
- 2010年 5位(Bクラス)
- 2011年 4位(Bクラス)
- 2012年 6位(Bクラス)※途中休養
阪神監督として5年で4回のAクラス、そして1回の優勝という成績は結果を出していると言えます。
一方オリックスの監督としての3年間はいずれもBクラス、最終年は事実上の更迭という残念な結果に終わっています。
よって本書で語られる組織論は阪神を良い例として、オリックスが悪い例として引き合いに出されています。
ただし本書で岡田氏の主張していることは次の言葉にほぼ集約されているといえます。
勝つチームをつくるために必要なのは、組織の力だ。
プロ野球は現場だけの力でも、フロントだけの力でも勝てない。
両者の力が合わさってこそ、結果が出る。そのためには、現場とフロントが同じ方向を向いて、どういうチームをつくるのかを、お互いでしっかりと話し合わなければいけない。
現場とフロントが1つになって、組織は初めて力を発揮する。
本書の示す現場とは、監督やコーチたち(選手は含まない)であり、"フロント"とは球団社長や本部長、場合によってはオーナーも含まれます。
最近は野球ファンの目も肥えており、監督やコーチの采配や指導力だけでなく、フロントの行う球団運営の手法が批判の矛先になることが多くなっています。
ただよく考えると、フロントは現場の人事や予算に関する主導権があり、さらにFAやトレード、ドラフトといった戦力補強にも一定の発言権を持っているから当然といえます。
これを企業に例えると、営業や製造といった部門が"現場"、経営陣、人事や財務といった間接部門が"フロント"といえます。
この2つの要素がうまく噛み合わない企業が業績を伸ばせる訳もなく、それだけに岡田監督が実際に経験し、そして分析した本書の内容は、ビジネスにも充分に応用できるといえます。
最後に蛇足ですが、悪い例として挙げられているオリックスはあくまでも組織論とはいえ、ファンが気の毒に思えるほどこき下ろされているのでご注意ください。