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ジャンル問わず気の向くまま読書しています。

三遊亭円朝と江戸落語


私自身が落語の熱心なファンというわけではありませんが、最近は若い世代にも人気が出ているようです。

落語の良いところは、堅苦しさがなく気楽に聞けるという点でしょうか。
最近は機会がありませんが、2割くらいの客入りの中でのんびりと昼席を楽しむ、もしくは映画代わりに夜席を楽しんだあとに1杯飲みにいくというのは、何とも言えない贅沢な時間の過ごし方です。

公演日を気にすることなく、いつでも開いている常設寄席の存在は日本演芸の屋台骨を支える存在だと思っていますが、新型コロナウィルスの影響で休演する常設寄席も出てきているようで心配です。

話が逸れましたが、本書では江戸から明治にかけて活躍した落語家である初代・三遊亭円朝(圓朝)を扱っています。

志ん生、志ん朝、談志など、名人を挙げればキリがありませんが、現代落語において円朝の果たした功績は比類するものがなく、大作を創作する一方で、明治以降の言文一致運動においても文壇へ大きな影響を与えたと言われています。

まず前半では円朝の生い立ちを辿ってゆきます。

放蕩三昧の落語家であった父・円太郎のせいで一家困窮する幼少時代を送りますが、名人と謳われた円生の元へ弟子入りして若いながらもメキメキと頭角を表します。

しかし弟子の実力に嫉妬したのか、やがて師匠との間に確執が生まれてしまいます。
それでも円朝は常に前向きであり続け、没落しつつあった三遊亭一家の再興を誓い、自らの活躍にとどまらず多くの弟子を育てます。

後半ではそんな円朝が創作した作品(噺)の筋を紹介しています。
本書で取り上げられているのは、以下の作品です。

  • 真景累ヶ淵
  • 怪談牡丹燈籠
  • 塩原多助一代記
  • 黄金餅
  • 文七元結

さらに終盤では「円朝をあるく」と題して、先に登場した作品ゆかりの地を写真付きで掲載しています。

ともかく1冊まるごと円朝を扱った、落語に興味のない人でも歴史上の偉人として、落語ファンには新時代を切り開いた稀代の名人として楽しめます。

Youtubeでも落語を聞くことはできますが、やはり落語は生で聞くのが格別であり、コロナ騒ぎが収まったら久しぶりに寄席へ足を運んでみたいと思わせてくれます。