キリンビール高知支店の奇跡
1957年に国内ビールのシェア1位を獲得し、長い間首位に君臨し続けてきたキリン。
しかしアサヒビールが1987年に「スーパードライ」を発売して爆発的なヒットを生み出すと市場に変化が起こり始めます。
そしてついにアサヒビールが1996年にキリンから国内シェアNo.1の座を奪還します。
著者の田村潤氏はキリンに逆風が吹く1995年に本社から都落ちに近い形で高知支店へ赴くことになります。
しかも高知県は全国的にもアサヒビールへ対して負け幅が大きく、最下位ランクの支店だったのです。
著者は大学卒業後にキリンへ就職し、高知支店長、東海地区本部長、そして代表取締役副社長兼営業本部長を務めたという経歴を持っています。
田村氏は、全国最下位の成績だった高知支店を全国トップクラスへと押し上げ、さらに2009年には営業本部長としてアサヒビールから再び国内トップシェアを奪還するという輝かしい実績を残しています。
本書はタイトルにある通り、田村氏をはじめとしたキリン高知支店がどのようにして全国最低クラスからトップに躍進したのかをメインに紹介しています。
詳しくは本書を読んでからのお楽しみですが、当時の高知支店の営業マンたちは「どうせ勝てない」と負けチームの風土に染まっていたようです。
そしてその風土は支店長の激で一朝一夕で変わるような簡単なものではなく、地道な取り組みを数年続けてようやく成果が出てくるものだったのです。
立場は変われども著者が一貫して行ってきたのが、現場主義だといえます。
それは大企業にありがちな膨大な時間を費やした会議で決定される販売戦略や、社内調整ではなく、ビジョンに基づいた現場での愚直な基本行動に集約されます。
キリンビールは100年の歴史を誇る老舗であり、「キリンラガービール」や「一番搾り」、「のどごし生」といったブランドを持っているメーカーという特性はありますが、他の業界や業種でも本書から参考にできる部分はあるのではないでしょうか。