老子の無言
孔子と並ぶ中国の思想家"老子"の教えを分かり易く解説した本です。
本書の特徴は単に老子の教えを解説するだけでなく、無理のない範囲で普段の生活に活かす方法を紹介しています。
よって老子について体系的な知識と正確な訳語を学びたい人には向いていないかも知れません。
冒頭に「上り坂の儒家、下り坂の老荘」と俗に言われる通り、儒教が君主の学問(≠帝王学)としての側面があるため、物事がうまく運んでいる時には孔子に学ぶのがよく、行き詰まって現状を打破したい時には、老子に学び根本を革新する重要性を訴えています。
ここで本書のほんの一部を簡単に紹介したいと思います。
・足るを知る者は富む
老子の有名な言葉です。
人間は不満の原因を外に求めがちですが、幸せは自分の中にしかない(=自分の感じ方次第)と気付くことができます。人間の欲望は悪いことばかりではありませんが、時には自分自身を見失わせるものであり、ふと歯止めをかけてくれる言葉です。
・善く戦いに勝つ者は争はず
これも現代のビジネスマンへのアドバイスになります。
老子は対抗心が対抗心を呼び、結果として不幸を招く争いに悩むことになると説いています。
心の持ち方次第で、無用な争いを避けられる場面があることを気付かせてくれます。
・功成り名遂げて身退くは天の道なり
成功の果てに更に大きな成功を目指すのは良い面もありますが、絶頂期を見誤って名を汚してしまう例も少なくありません。自らの利己心が膨らみすぎていないかを省みる必要性を教えてくれます。
老子については、バブル崩壊以降、殺伐としてストレスの多い社会を反映して見直される機会が多いように感じます。
決して老子一辺倒になる必要は無いと思いますが、日々の中でライバルに打ち勝つ方法論に偏り過ぎ、一番大切な"自らに克つ"ことを忘れてしまいがちです。
また"自らに克つ"ためには、力や知識は余計なものであり、水のような自由・柔軟さ(上善水如)が必要です。
2500年前に生きた老子の言葉は現代においても大事なことを気付かせてくれます。