レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

天を衝く(2)

天を衝く(2) (講談社文庫)

引き続き、九戸政実を主人公した「天を衝く」2巻のレビューです。

南部氏を大きく飛躍させた"南部晴政(なんぶはるまさ)"ですが、彼の死後に家督相続を巡って大きな混乱が訪れます。

元々、養子でありながらも後継を約束されていた"信直"がいましたが、老年になってから実子である"晴継"が誕生して以降、次第に"信直"は疎んじられるようになりました。

たとえ戦国時代であろうと自分の子供が世の中で一番愛しいものですが、それが裏目となることも少なくありません。

晴政の葬式において元服前であった晴継が刺客により暗殺されてしまう悲劇が起こります。


政実は信直が刺客を放った張本人であるとし、その家督相続に真正面から反対します。

そして対抗馬として実弟で晴政の婿養子となった"実親"を後継者として推し、南部家は真っ二つに割れて対立することになります。

一方で政実は、お家騒動の最中にも関わらず自らの手勢で他国の領土を侵略し力を蓄えてゆきます。

北の鬼」と恐れられた政実は、精強な騎馬団と綿密な策略により、向かうところ敵なしの快進撃を続けます。


南部家内部の争いへの武力行使を避け、あくまでも知力と用いた解決を試みますが、信直の側近には最大のライバルとなる"北信愛(きたのぶちか)"という智将が控えており、苦戦を強いられることになります。

九戸政実と北信愛の争いは本作品の大きなテーマであり、手に汗握る水面下の攻防が繰り広げられることになります。

北信愛は強者(信長・秀吉)に従うことで南部家の安泰を図りますが、政実は強者を信用せず、あくまで自分たちの力で南部家を飛躍させようとします。


どちらの主張も南部家を存続させるという目的は一致しているだけに、この方針の違いによる溝は深く、2人は宿命の敵として対決することになるのです。