レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

歌舞伎町・ヤバさの真相

歌舞伎町・ヤバさの真相 (文春新書)

ジャーナリスト、ノンフィクション作家として暴力団を題材とした作品を多く手掛けている溝口敦氏による作品です。

いきなり歌舞伎町への潜入ルポかと予想していましたが、江戸時代の鉄砲百人組同心、遊郭の頃にまで遡って歌舞伎町の成り立ちを解説しています。

その内容もかなり詳細であり、民俗資料館で解説されてもおかしくないレベルです。

さらに戦中・戦後の歌舞伎町へと時代が進み、その時代の歌舞伎町成立に関わった人々へのインタビューを交え、裏社会に詳しい著者の独壇場といった本書ならではの内容へと移ってゆきます。

歌舞伎町ほど暴力団愚連隊、そして外国人マフィアといった闇勢力の関わりが町の成立に濃く影響した場所も珍しいことが分かります。

それは戦後の闇市、そして過去の遊郭の延長線として現在でも様々な風俗店が軒を連ねていることとも大きく関連しています。

著者は"歌舞伎町"を香港の"九龍城"と似ていると指摘していますが、廃墟から様々な人々たちが自衛力(=武力)を持ってしのぎを削ってきた歴史は確かに共通する部分が多いと感じます。


社会のタブーとされる領域に切り込んでゆく著者にとって歌舞伎町は決して避けることの出来ない繁華街であり、その裏の姿は毎日歌舞伎町へ訪れる人にも初めて知ることが多いのではないでしょうか。


様々な人々の利害が絡み合い混沌の中で日本一の繁華街にまで成長した"歌舞伎町"。
その不思議な魅力を余すことなく紹介した1冊です。