レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

怒涛のごとく〈上〉

怒涛のごとく〈上〉 (文春文庫)

海を舞台にした歴史小説家で知られる白石一郎氏による1冊です。


本書は鄭成功(てい・せいこう)を主人公とした小説ですが、実際にはその父である鄭芝龍(てい・しりゅう)との父子2代に渡る構成となっており、上巻では鄭芝龍の活躍と鄭成功の幼年、青年時代を中心に書かれています。

鄭成功は国際貿易港として有名だった長崎県の平戸で生まれ、母親は日本人であることから日本でも比較的有名な人物です。

鄭芝龍は貿易に従事していますが、倭寇(海賊)としての裏の顔を持っていますが、息子の鄭成功へ対しては跡取りとして幼い頃より徹底的に学問を教え込みます。

これは文官が武官よりも圧倒的に力を持っていた中国においては成り上がりの海賊の頭目としての影響力は限界があり、その壁を息子に打ち破って欲しいという願望が込められていました。

鄭成功は明において科挙試験合格を目指すべく学問に励みますが、肝心の明が"ヌルハチ"を太祖とする満州族が建国した清によって滅亡の危機を迎えることになります。

日本では戦乱の時代が終わり鎖国政策が始まろうとしている時期である一方、中国では戦乱の時代を迎え、さらにアジアへ進出してくるヨーロッパ諸国が加わるという激動の時代を鄭親子は直面することになります。

ダイナミックでスケールの大きな父子の2代の物語は、歴史小説ファンなら是非読んで欲しい1冊です。