レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

月島慕情

月島慕情 (文春文庫)

浅田次郎氏の短編7作が収められた作品です。

前回紹介した「草原からの使者」が著者にとって冒険的な試みが見られた短編集だったのに対し、本作品は浅田氏の本領発揮ともいえる人情モノ小説に絞った作品が揃っており、ファンであれば是非読んでおきたい、また著者の作品をはじめて読む人にとってもお勧めできまる1冊です。

どの短編を読んでも手抜きが微塵も感じられず、読み応えのある内容に仕上がっています。

著者の長編小説が壮大な歴史を舞台にした感動巨編であるのに対し、短編小説は市井の人々が織り成す心温まる物語であるといえます。

前者が時代を変える気概と実力を持った人たちの勇敢な自己犠牲だとすれば、後者は身近な人のために献身的に尽くす優しさと表現することもできます。

普段より読むペースを緩めて、映画を見るように1作品、1作品をゆっくりと味わって欲しい1冊です。