レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

怒涛のごとく〈下〉

怒涛のごとく〈下〉 (文春文庫)

下巻に入り、鄭成功は日本に別れを告げ、中国へ渡ることになります。

日本で勉学に励んだ鄭成功は科挙の登竜門ともいうべき童試に挑み、順調に合格してゆきます。

しかし李自成に率いられた農民による反乱軍、そしての南下により首都の北京を陥落され、皇帝が自害するに至り明は滅亡することになります。

つまり明の制度である科挙試験が消滅することで、鄭成功は大きな目的を失うことになります。

鄭芝龍・成功親子は新たに南京で即位した隆武帝を補佐することになりますが、そこで父と子の意見が対立することになります。

鄭芝龍は鄭家の存続と繁栄を優先させ、場合によっては清に降伏することもやむを得ないと考え、子の鄭成功はあくまで清を敵とし、明の復興にすべてを捧げる決心をしていました。

やがて鄭芝龍は息子の反対を押し切って降伏のために清へ自ら赴きますが、そこで捕らえられ幽閉されることになります。

必然的に嫡子である鄭成功は鄭家の首領となりますが、自らの信念のために父親を犠牲にして反清復明(清と倒し明を復興させる)の運動にすべてを捧げる決心をします。

やがて鄭成功は力を蓄えて清を打倒すべく北伐を開始することになります。。。

この続きは小説を読んでの楽しみにしたいと思います。

鄭成功は今でも中国・台湾では人気がありますが、それは彼が単に清へ抵抗する海賊としてではなく、明の復興を誓った亡国の英雄としての生き様が後世の人々を感動させるからではないでしょうか。

ちなみに当時の日本は江戸幕府により鎖国が徹底されつつあり、鄭成功による江戸幕府への援軍要請に対しても一貫して他国の内乱不干渉の方針を徹底しました。

鄭成功が最盛期に300隻以上の船団20万人近い軍勢を有していたことを考えると、江戸幕府との連携で清へ対抗した時の歴史の"if"を思わずにはいられません。