民主の敵
第95代内閣総理大臣、野田佳彦氏による著書です。
表題の「民主的の敵」の民主とは、本書の中で民主党、そして民衆の2つの意味で使われています。
2009年7月に出版された本のため、本書の執筆時点では民主党政権は誕生しておらず、野田氏自身もわずか2年後に総理大臣に就任するとは想像していなかったのではないでしょうか。
ただ本書が執筆された時点で自民党の支持率は下降の一途であり、衆参ねじれ国会の状態でもあったため、近い将来に民主党が政権を奪取できるという予測は出来ていた時期にはありました。
その勢いもあってか本書の前半では、"死に体"である自民党へ対して批判の集中砲火を浴びせることに費やしています。
紙面の都合なのか細かい政策面には触られていませんが、約50年にわたる自民党政権の継続により様々な利権が生まれ、政権交代によるリセットでしか、この国を変えることは出来ないと言及しています。
野田氏は世襲の政治家ではなく、まして裕福な家庭に育った訳でもありません。
そのため1000円散髪に代表される"庶民派の宰相"と評されます。
地盤や資金力が無かったことを考えると、相当な苦労をしてきたと思いますが、当然のように世襲代議士に対しては批判的な態度をとっています。
後半では松下政経塾の1期生出身の影響ということもあるのか、ダイナミックな壮大な宇宙開発を中心とした国土開発にも言及しています。
当時の民主党幹部という立場もあり、個人的な主義主張よりも党の政策を宣伝する印象を受け、全体的に歯切れの悪い印象を受けてしまうのは残念な点です。
経済、財政、外交それぞれ抱負を述べていますが、結果として民主党が2009年9月に政権を取ってから何一つ好転していないのは、本人にとっても残念な状況でしょう。
現時点では、本書は斜め読みする程度の価値しか無いのかもしれません。