レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

幻想と怪奇 おれの夢の女

幻想と怪奇 おれの夢の女 (ハヤカワ文庫NV)

序文から抜粋して本書の概要を紹介します。

本書『幻想と怪奇』は、1950年代を中心にして、英米仏の現役異色作家たちの短編から主として選んだホラー・アンソロジーである。

つまりホラー小説の短篇集です。

"ホラー"と聞くだけで敬遠する人がいますが、皆さんの想像とは少し違うかもしれません。

現代ホラー小説の主流は"恐怖"の感情を鋭利に切り取った作風が多い中で、50~60年前の海外の古典的ホラー小説には、SFやダークファンタジーといった要素を織り交ぜた作風が主流でした。

実際にSF、ファンタジーを描いている作家が、ホラー小説を手掛ける機会も多く見られました。

350ページという文庫としては標準的な分量の中に、様々な作家による13編ものホラー短篇を収めた魅力的な1冊に仕上がっています。

1作品あたり10~15分くらいでテンポよく作品を読めてしまいますが、作者の立場からすると短い時間で読者を惹き込み、物語の導入から完結させなければいけないという、実力の見せ所ではないでしょうか。

本書は1970年代後半にハヤカワ文庫NVより発刊された『幻想と怪奇』全3シリーズの新装版であり、その3作目にあたるそうですが、すべて短編集という形をとっていることもあり、どの巻から読み始めても楽しむことができます。

どれも印象的な作品で甲乙つけがたいレベルに仕上がっており、作品の舞台が今から半世紀以上前にも関わらず、まったく違和感なく作品へ没頭できます。


編集者の作品の選別眼、訳者の実力が本書のレベルを高いものにしているのではないでしょうか。