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引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

異形の将軍―田中角栄の生涯〈上〉

異形の将軍―田中角栄の生涯〈上〉 (幻冬舎文庫)

いまだに歴代総理大臣ランキングで上位に登場することからも分かる通り、団塊より上の世代の人たちに圧倒的な人気を誇る"田中角栄"。

日本列島改造論」に代表される政策は都市部のみが恩恵を受ける状況を打破し、地域格差を是正する大胆な発想に基づくものであり、当時の多くの国民に受け入れられました。

また周恩来毛沢東といった中国の指導者たちとの会談で実現した「日中国交正常化」は彼の政治家としての代表的な実績であるといえます。

決して裕福でない家庭に育ち、大学卒業といった学歴が無いにも関わらず、単身上京して立身出世を果たした人懐っこい太閤秀吉のようなキャラクターも人気の要因といえるでしょう。

一方でロッキード事件に代表される「金権政治」といった政治家の悪いイメージを作り上げた人物として負の面も併せ持っています。

そして最近では再び"田中角栄"が見直されつつあります。

これを裏返せば、野党のみならず党内の批判を恐れて国民の顔色を伺う人物ばかりが首相に就任し、国家を明るい未来へ導くといった気概、そして人間味を感じられない没個性的な首相ばかりが誕生する現状への不満ではないでしょうか。

私自身は田中角栄が総理大臣だった時代を知る世代ではありませんが、彼ほど多くの本に取り上げられた総理大臣はいないのではないでしょうか?

津本陽氏の作品だけに、読む前は"田中角栄"を題材にした小説だと思っていましたが、実際の中身は伝記に近いものであり、小説らしい脚色された表現は殆ど見られません。

それだけに等身大の田中角栄を知りたい人にとっては、うってつけの本であるといえます。