宇宙を語る〈1〉宇宙飛行士との対話
1995年に発刊された同タイトルの本を、分冊・改訂して文庫化した立花隆氏による1冊です。
ガガーリンが人類初めての宇宙飛行を実現してから50年余り、人類がはじめて月面着陸を果たしたアポロ計画からは40年余りの月日が流れています。
21世紀に入り民間会社による宇宙旅行といったプランも現実化しつつありますが、まだまだ一般人にとって"宇宙"は身近な存在ではありません。
人類が宇宙に進出してからまだ100年に満たず、月や火星に植民地を建設するといった時代が来るのは、もう少し先になりそうな気配です。
それは本書の序論にある次の一文がよく示してくれています。
かつて、宇宙飛行士ラッセル・シュワイカートは、人類の宇宙進出を評して、これは太古において水中にしかいなかった生物が初めて陸上に進出したときにも比すべき生物進化の一大ターニングポイントであると指摘した。
宇宙飛行士のみならず科学者やエンジニア、民間企業など数多くの人びとが"人類の宇宙進出"に関わっています。
それでも宇宙の話を聞くのに、もっとも刺激的で面白い話を聞けるのが、実際に体験をした宇宙飛行士たちではないでしょうか。
文庫版の1巻目では、毛利衛、向井千秋、菊地涼子、野口聡一といった有名な4人の日本人宇宙飛行士と立花氏の対談が収められています。
特殊な訓練、宇宙船の中での生活、実験内容まで内容は多岐に渡り、また宇宙酔いをはじめとした肉体的な体験を語れるのは、宇宙飛行士ならではないでしょうか。
さらに立花氏は、宇宙を経験したことによる心境的な変化にも鋭く迫っています。
その中で印象に残ったのは、毛利衛氏がはじめて宇宙で太陽を見たときの感想です。
太陽を見ることが宇宙での目標の一つにあったんです。
でも実際に太陽を見たところ、あまりにも強烈なエネルギーの塊で真っ白く見えた。
太陽というのはもっと生命を育むようなものと思っていたんですが、そんな感じはしないで、ただもうまったく無機質なエネルギーの塊で、生命はとてもその下では生きられないというような感じがしました。
かつて子供向け雑誌で読んだ科学の記事のような、ワクワクする感覚で一気に読めてしまいました。
世の中にまったく宇宙に関心の無い人は少ないのでないでしょうか。
つまり本書は誰もが楽しめる大人向けの"宇宙入門書"でもあるのです。