孟夏の太陽
中国の春秋時代を舞台にした宮城谷昌光氏の歴史小説。
今でこそ宮城谷氏は幅広く歴史小説を書いていますが、なんといっても春秋戦国時代を舞台にした作品が彼を一躍有名にしたといってよいでしょう。
500年にも渡って群雄割拠の時代が続き、また孔子や老子といった中国を代表する思想もこの時代に生まるといった華やかな時代でした。
また春秋時代の最大の国といえば晋ですが、この晋が韓・魏・趙に分裂したのを区切りに戦国時代に突入します。
その中の1つ、趙を建国した趙氏代々の物語を題材にした小説です。
5編からなる短篇集という形をとっていますが、それぞれ主人公は趙盾(ちょうとん)、趙朔(ちょうさく)、趙鞅(ちょうおう)、趙無恤(ちょうぶじゅつ)の歴代の当主4人であり、約200年に渡る時代を追いかけた壮大なスケールで繰り広げられます。
主人公の中には晋の宰相として名声を馳せた人物もあれば、政争に敗れて殺害された人物もいたりと、晋の貴族の家系でありながらも長く続いた戦乱の嵐に翻弄され、そして抗い続けた一族の歴史が綴られています。
本書に限らず、宮城谷氏は春秋戦国時代という殆どの人にとって馴染みのない世界を分りやすく、そしてドラマチックに描き上げてくれます。
私自身も10年ほど前より宮城谷氏の作品を読んでいますが、今ではすっかり春秋戦国時代と彼のファンになっています。
本書最初の主人公である趙盾の父・趙衰は、放浪の末に晋の名君となった重耳に仕えた人物です。
宮城谷氏が「重耳」という作品でその生涯を描いているため、本書と併せて読むことでより奥行きのある世界を楽しむことができます。